トラッキィギャンビィ

投機した時間の軌跡

【読書メモ】重力ピエロ

伊坂幸太郎って誰やねんって思ってましたけど「陽気なギャングが地球を回す」の作者なんですね。友達から借りて読んだことありました。
これで伊坂幸太郎さんの本は2作目となりました、1冊目もそうでしたが、テンポよく読める本でした。

目次

作品詳細

作品名:重力ピエロ
作者:伊坂幸太郎
出版社:新潮文庫
発売日:2006年7月1日

重力ピエロ (新潮文庫)

重力ピエロ (新潮文庫)

 

あらすじ(ネタバレ)

「春が二階から落ちてきた。」で始まる小説。

主人公の泉水は遺伝子関連会社の社員、弟の春は画家の才能を持つ落書き消し屋さん。推理小説好きの父はガンに侵され入院中、母は5年前に他界している。
昔、母はレイプされ、その時身籠ったのが弟の春という少し複雑な関係。

物語は、主人公の勤める会社が放火されるところから動き出す。弟が、グラフィティーが書かれている場所で放火がされているというルールを見つけ、兄弟で犯人を捕まえようと、探偵や弟のストーカーも交えて物語が進む。
調べるうちに、弟の言動がおかしいことに気付き、過去の弟の一瞬だけ覗き見てしまった狂った姿などを主人公は思い出す。
そして、弟のストーカーは弟が同じ言葉を繰り返しノートに書き、同じ映画を何度も順番に見ていることをストーカーしている時に、見つけ精神的に狂っていると心配し、主人公に相談する。

結局、弟が放火の犯人であるが、それは地元に再び戻ってきたレイプ犯の反省を見るためであり、反省が見えないため殺してしまう。
主人公は、それを見ているが、弟を受け入れ、父もまた物語の途中で弟が犯人であると気付くが、それを見逃し、レイプ犯が殺された後で、全てを知り手術を受けそのまま死んでしまう。

最後は、日常描写で兄弟仲良く酒を飲み、じゃれあって「春が二階から落ちてきた。」で幕を閉じる。

感想

あらすじを書きにくい小説でした。
あらすじで書くと、全然面白くないように見えるのは、僕の伝達力の低さが原因です。
この小説は謎を解き明かしていくミステリーで、弟が所詮はレイプ魔の遺伝子を受け継いだ狂人・サイコパスであるように、描いておいて、登場人物がストーカー以外全員少し狂った人というのが面白さの大半を占めるんじゃないかなと思います。

世間的には、全員おかしなことを許してしまいますが、この家族からしたらレイプによって様々なものが壊されているので、狂っていてもまぁ説得力があるのかなとも思えました。

ただ、主人公も弟も父親も、異常生でに文学などの教養が深く、全員が全員こんなに似たものを読み込んで成長してきたのは、現実離れしすぎていて納得のいかない部分でした。

主人公一家は、全員どこか心のないような描写が多い印象ですが、その実、想像力がありすぎるから相手のことまで含めて感じ取り、その中での合理的行動をするために心がないように見える。

対して、レイプ犯はとても人間の情が感じられるように描かれていますが、その実、自分のことしか考えてなく他人の気持ちなど何も考えていません。

これは、「決断力」の感想でも書きましたが、世の中における心のあるなしの話を端的に表していてとてもすんなり受け入れられました。
やっぱり、この考えは割とあってるんじゃないかなと思っています。