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投機した時間の軌跡

【読書メモ】偉大なる失敗

目次

作品詳細

作品名:偉大なる失敗
作者:マリオ・リヴィオ
訳:千葉敏夫
出版社:早川書房
発売日:2015年1月20日

偉大なる失敗:天才科学者たちはどう間違えたか

偉大なる失敗:天才科学者たちはどう間違えたか

 

要約

ダーウィン

往々にして無知は知よりも自信を生むものだ by ダーウィン

種の起源」という一撃で、生物にデザイン性があるから神のようなものが作ったに違いないという思想を壊した天才科学者。

ダーウィンの失敗は、当時ダーウィンも疑問を持ちながらも信じ、その仮定を受け入れていた「融合遺伝」の考え方の元では、ある個体の遺伝的要素は12世代も経れば2048分の1になってしまうというもの。

ダーウィンは自伝にて数学の才能がなく、ジェンキンによる数学的な批判も言われて初めて気がついたほどだと述べている。

その、批判や融合説を乗り越えようと掲げた「パンゲン説」は、体が細胞に指令を出すことで適応し、その記録情報を子孫に受け継ぐと打ち出したが、全く間違っていた。しかしそれを頑なに信じ続けた。ダーウィンはメンデルの論が書かれた本を所有していたが、読んでいなかったようだ。

メンデルによって、融合説が壊され、極端な遺伝性質も保存されうることがわかったが、ダーウィンの時代として種の起源は枠内では批判を受けるのは、しょうがないほど破綻していた理論だった。

メンデルの論文の再発見や評価、ダーウィンの説の評価には70年の年月を要した。

ウィリアム・トムソン(ケルヴィン卿)

地球の年齢は、古代から多くの神学者や地質学者、物理学者が挑み、神学者は聖書、地質学者は地質、物理学者は熱など自分の分野から類推したためばらつきが大きかった。

ダーウィンの親友でもあったライエルはゆっくり作用する地質的な力が目に見えるとしたら膨大な時間が必要だとする「斉一説」を唱え、地球は化学・電気・熱エネルギーが循環することで自律的なシステムが周り、力が一定だとした。

それに反対したのが、ケルヴィン卿で物理学を駆使し、地球の内部温度を測定し、地球の年齢を2000万〜4億年とした。地質学者の浸食や堆積という未解明のものをあてにできないための措置だった。
さらに、同じような測定で太陽は重力エネルギーで動いているとし、1億年もすれば動かなくなるとした。

今日、地球の年齢は45億年ほどと言われているが、これを誤った理由は、ケルヴィン卿の「地球は一様な個体である」と考えたことと、放射性物質の存在がまだわからなかったためで、前者の考えが大きな割合を占めていると言える。

これらの間違いは心理学的特性で説明でき、人間はある意見に傾倒すればするほど、たとえ意見とは食い違う強力な証拠を突きつけられたとしても、意見を手放すのが困難であるということである。

ポーリング

タンパク質の構造αヘリックスなどを提唱して、化学の権威であったがDNAの構造に自分自身で言及していたものの、今までの経験からDNAの構造に対して否定的な立場をとってしまう。

また、イギリスへ赴いた時、αヘリックスの説明に忙しくDNAに関するX線写真を目逃しただけでなく、のちにDNAのAT、CGが同数になるという論文を発表するシャガルフと性格が合わなかったために、彼の研究を聞き流し、その論文にも目を通さなかった。

その結果、全く化学的に間違ったDNAの論文を提出してしまう。

その原因として、実質研究期間が1ヶ月だったこと、共同研究者がいなかったことによるデータの質の低下、シャルガフの論文を読まなかったことによって三重螺旋作ってしまったこと、自分自身が言及した自己補完性の原理によるDNAは二重螺旋構造である可能性が高いことがあげられる。

αヘリックスの成功をDNAでも使えると思い込んでしまい、帰納的推論に頼りきってしまったこと、認知バイアスがかかってしまったことが大元の原因。

フレッド・ホイル

恒星内元素合成理論や超新星爆発などを提唱し、炭素の共鳴から宇宙の炭素量の問題解決などをした。研究で本当に価値があることを成し遂げるには、仲間の意見の逆を行く必要がある。そして繊細な判断力も必要という持論を忠実に実行していた。

しかし、定常宇宙論では理論丸ごと間違ってしまう。他の失敗した科学者と違い、計算・観測事実と全く間違いはなかったが、最終的には間違いであった。

その間違いをした理由として、科学者と議論を全くしなくなったこと、生物に対する独特の考え方などがあげられる。無生物と生物の違いがわからなかった「ホイルの誤謬」とも言える。

大きな理論や考えを否定された時に意固地になってしまうのは、人間の間違えとして多くある。

感想

偉大な科学者たちの失敗から学ぼうという本でした。

全てがうまくいっていると思いがちの成功者たちの話でしたが、メディアが切り取っている成功部分しか僕らは見れないし、見ようとしないためだったと気付かされます。

SNSなんかでも多くの友達の華やかな場所だけを切り取っているから、相対的に自分は不幸せに感じてしまうという現代病の一種がありますが、普通に考えればどんな人だって、くそ退屈でくそつまらない日常とか、不幸や失敗を経験しているはずなんですよね。

この本では、多くの失敗が心理的な人間的な欠陥から、起こっていることをそれぞれのケースとともに学べて、みんな同じように間違うんだなぁと教えてくれます。
その他にも、大体の科学の歴史なんかもしれて勉強になりました。

専門用語や、専門知識の説明が多すぎて、嫌になる本でもありましたが、我慢すればまぁ知識も増えるんじゃないかと思います。僕には少し難しすぎました。飛ばし飛ばしで読んでます。

最後のアインシュタインの章なんて、嫌になって飛ばしまくったのでようやくもできてません。すいません。
知りたい方は、ぜひ手にとって読んでみてください。