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投機した時間の軌跡

【読書メモ】プラスチックスープの海 2/2

こちらは、生物に関するプラスチックのことについて要約しています。

目次

作品詳細

作品名:プラスチックスープの海
作者:チャールズ・モア カッサンドラ・フィリップス
訳者:海輪由香子
出版社:NHK出版
発売日:2012年8月25日

プラスチックスープの海 北太平洋巨大ごみベルトは警告する

プラスチックスープの海 北太平洋巨大ごみベルトは警告する

 

要約

合成化学の歩んできた道

初期のプラスチックは19世紀に作られ、樹液・綿の繊維・木粉・骨粉などに何らかの化学物質を加える「半人造品」で、まだ分解できるプラスチックであった。

次のプラスチックは、配線の絶縁体「セラック」の安価な代替品として発明され、様々な用途で使われて20年代には、年4000トンも生産され、このプラスチックは密度が高く、ゴミとしては海底に沈んでしまい分解も難しい。

1930年代になると主要なプラスチックである「合成樹脂ポリエチレン」が生み出され、1950年代に大量生産の目途がつき、今ではプラスチックの年間生産は3億トンにもなり、世界で最も使われる素材で、世界の経済成長を牽引している。

最初の頃は未来の物質のように言われたが、その化けの皮もはがれ今では安っぽい使い捨てのまがい物となった。

パッケージ黄金時代

マーケティングとは、眠ったような消費者の倹約生活から、買って使い捨てる気分を煽るのが仕事となった。それらと大量生産大量消費が結びつき、プラスチック製品の使い捨てへと繋がっていった。

パッケージの主役であるキャップ及びふたの市場は年間400億ドルにもなる。現代では、ほとんど全てのものが容器か箱に詰められており、その53%がプラスチックだと分析されている。

時代とともに発展した衛生管理学は、梱包をして品質をあげ損傷率を下げる効果があるが、プラスチックの侵入を正当化し環境を破壊している。残念ながら、企業の成長と環境への配慮は今のところ両立しにくいと言わざるをえない。そして企業が成長を約束する限り、プラスチックの生産は増え続けると言える。

地球のごみ捨て場

昔から人間は、海や川を無限の処理能力を持った多目的浄化装置として使ってきた歴史を持ち、2009年の試算では、これまでに6億1500万トンのプラスチックが海に投棄されていると発表もされた。

産業革命前には、河川に排出物と廃棄物を流し伝染病をたびたび起こし、産業革命後には、様々な業種や消費者が河川に有害な廃液やプラスチックを垂れ流しにした。そして今、様々な影響が出始めている。対策に乗り出すも、企業・個人は違反し続けた。

魚網の行く末

魚網も軽くて使いやすく捨てられるプラスチックを使っている。魚網は帰ってくるときには荷物になり、そのスペースに魚を入れたいため遺棄されることが普通であった。遺棄漁具は多くの生物の、好奇心や餌と見間違うことや移動に対して不幸な結果をもたらしている。

1990年代に大西洋で回収された遺棄魚網には900kgのたらが絡まっていた。流し網によって17500羽のこアホウドリが死んでいる推計もある。禁止後に延縄漁が行われるようになったが、逆に殺傷力は上がり何十万羽もの鳥が死んでいる。

 

食物連鎖の底辺で

マイクロプラスチックはプランクトンの6倍の重量もあり、一部はその数でも上回る。平均で一平方キロあたり473g、334271個のかけらがあり、全体では84.3トンのマイクロプラスチックがあるとの調査結果が出た。大きなゴミとなると魚網で1トン近くもあり、浮き沈みしている普通のゴミは数百万にものぼる。

沿岸と渦流でのゴミ様相は、予想に反し沿岸の方が数は多く、渦流の方が重量は17倍にであった。これは沿岸の方が海に入ってから間もないために、餌となってなく、藻のついたフィラメントは沈んでしまうためだ。

海洋生物たちの好物

マイクロプラスチックは動物プランクトンの食物である植物プランクトンそっくりである。ではそれらを食べる生物、食物連鎖には影響はないのだろうか。調べたところによると、大小様々な海洋生物にプラスチックは入り込んでいることが判明した。

多くの食物連鎖の頂点付近の海洋生物を調べると、PCB類・DDT・難燃性臭素化物などが検出され、治療不能なガンや脂肪層には残留性PCB農薬が高濃度に溜まっていた。これらの汚染は、不気味なことにすぐに生物を殺さず、弱らせて、生体システムに欠陥を生み、病気への抵抗力を落とし、繁殖率を下げ、健康を害する。

プラスチックの毒性

プラスチックは漂っている毒性化学物質を吸収するという衝撃的な論文が発表された。

石油は本来毒性を持ち、そこから生成されるプラスチックにも毒性がある。PCBなどの残留性有機汚染物質は油に溶けやすいため、似ている脂肪・油・脂質などに引き寄せられ、あらゆる生物が体内にためてしまう。

これらはプラスチックではないが多くの生物から検出されている。この物質の実験結果として、子の体格が小さくなり、致死率が上がり、成長が遅く成り、肥満との関連が見られた。これらは、最近の人間に増えている疾患と似ている。

人間に入るプラスチック

1970年代から肉牛の飼料として樹脂ペレットが混ぜてある。理由は食物繊維のように栄養の吸収と肥育を促進するためである。

毒物学者が言うには、摂食・吸入・皮膚からの吸収の3つの経路がある。

吸入してしまうものとして、PCBが禁止されてから流行った難燃剤の成分のポリ臭化時フィルエーテルである。これが十分含まれていないため、防炎基準を満たせずにリコールされた商品もあるほどである。

感想

とんでもなく、怖い未来を想像させてくるような本でした。

いつの日か、プラスチックでできた大陸ができそうな勢いですね。僕らは、これから発展する国に僕らがやってきたことと同じことをするなとは言えません。そんなことをしてるうちにプラスチック大陸が完成してしまったらどうするのというのもわかります。しかしどうしようもない感じがすごいですね。政治とか環境の難しいところですね。

たった3~4世代で作り出したプラスチックに生物側が対応しろというのも、進化論的な時間軸でいうと無理な話ですよね。一時期話題になった「暗黒バエ」だって世代で言えば、半端じゃない世代を越させたから、進化が見えたわけですし、たった100年もしないなら色んな生物が絶滅しちゃうのも、どうしようもないのかと思います。

それに、あらゆる生物にもうプラスチックが入り込んでいるってのも衝撃でした。僕らは見ないふりして、ゴミを投げ捨ててたら、いつの間にか食物に混ざり込んで僕らの健康を害しているのかもしれないわけですから、自業自得ですよね。

こんな失敗を繰り返して人間は進んできたみたいですけど、地球を終わらせるような危機も回避できるんですかね。なんだかんだ、今までは自然が強かったから少しずつ征服出来てきた訳ですけど、完全に自然を殺すようなもの放って自然に勝っちゃったらどうなるんですかね。

プラスチックとどう向き合うかを考えなきゃいけないのかもしれないですね。