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投機した時間の軌跡

【読書メモ】ニーベルンゲンの歌 後編

目次

作品詳細

作品名:ニーベルンゲンの歌 後編
作者:不明
訳者:石川栄作
出版社:筑摩書房
発売日:2011年4月10日
原作発表年:13世紀ごろ

ニーベルンゲンの歌 後編 (ちくま文庫)

ニーベルンゲンの歌 後編 (ちくま文庫)

 

あらすじ

悲しみに暮れていたクリームヒルトは、フン族の王エッツェルから求婚される。ジークフリートを忘れられなく乗り気ではなかったが、エッツェルと再婚し、フン族の武力を利用してブルグント国を滅ぼして、ジークフリートの仇を討つことを企んだ。

数年後、クリームヒルトはエッツェルに、グンターはじめブルグントの人々を招待させた。ハーゲンはクリームヒルトの疑い反対するが、結局グンターは使節団を編成し、フン族の国を訪れる。ライン河を渡河するとき、ハーゲンは妖精から「1人を除き、全員が死ぬだろう」との不吉な予言を聞ことになる。東ゴート族の王で、フン族の客分だったディートリッヒは、クリームヒルトが復讐を企てていることを使節団に警告する。その後、クリームヒルトはディートリッヒにも復讐計画に助力するように依頼するが断られる。

クリームヒルトはエッツェルの弟ブレーデリンを焚き付けて、歓迎の宴に出席した使節団を襲撃させる。騙し討ちに気づいたハーゲンは剣を抜き、宴にいた幼い王子を斬り殺す。それによってブルグントとフン族は完全に決裂し、フン族の同盟軍も巻き込む凄惨な殺し合いが始まった。クリームヒルトは宮殿広間の扉を閉じて使節団を閉じ込めてフン族の戦士を次々に突入させるが、使節団の反撃によって勇士をほとんど失ってしまう。使節団側も死闘の中で多くの勇士が散っていく。広間に立てこもる生き残りはグンターとハーゲンの二人だけとなった。はじめは加勢を断っていたディートリッヒだが、部下を皆殺しにされ加勢を決意して、ハーゲンとグンターを生け捕りにする。

クリームヒルトは生け捕り後に地下牢に拘束されていたハーゲンに、ニーベルンゲンの財宝を渡すなら命を助けると言うが、ハーゲンは「グンター王が生きている限り、財宝のありかは話せない」と拒絶する。クリームヒルトは「二人の命は助ける」というディートリヒとの約束を破り、兄であるグンターを斬首し、生首をハーゲンに見せつける。ハーゲンはそれでも財宝のありかを言わなかったため、クリームヒルトは激昂し、元はジークフリートのものであった剣(バルムング)を彼から奪い彼を斬殺した。クリームヒルトは、縛られて無抵抗の勇士に対する仕打ちを見ていたヒルデブラントが激昂し、斬り殺される。残されたエッツェルとディートリヒは、死んでいった多くの勇士たちを思い悲嘆にくれる。

感想

全ての物語の構成が、前編との対になっていて読みやすい仕掛けになっているなーと感心しました。注釈で、対になっている部分には前編のこの部分と対になっているよーというのを全て解説してあってそれもわかりやすくしていた一因だと思います。

解説にもありましたが、ブリュンヒルト伝説とブルグンド伝説を前編後編として構成しているみたいです。そのせいか、クリームヒルトの性格がこんなに好戦的なのかとか、後編には全くブリュンヒルト出てこないなとか、主要人物の情報に齟齬が出ているのはどうなのかなと思いました。

あとは、やっぱり人物の呼称が常に変わっていくのは気になる点でした。ジークフリートやクリームヒルトなら親の名前も物語中に出ていたのでまだ把握出来ましたが、後編になると、登場もしていない親の名前や師匠の名前を出して、それの息子だとかと書くのはなんのためなんだろうと若干困惑です。

ニーベルンゲン族と呼ばれる一族がどんどん変わっていき、そのニーゲルンゲンの財宝を所有いていたものは必ず滅びて、次の一族へと引き継がれていく様は、諸行無常や盛者必衰のようで権力は必ず弱り時代とともに移っていくものだということが描かれていて、いつの時代でもどこの場所でも力ってのはそんなもんなんだなってのを改めて気づかされました。あぐらをかくなよってのを教えたいんでしょうかね。

個人的にはハーゲンのような一生懸命、他の力を削って、己の力を強くしようとする人物はすごい参考になるなぁと思いました。ジークフリートを暗殺して、ニーベルンゲンの財宝を隠して、色んな相手を殺して、人気がないかもしれませんが、出来うる範囲のことを全てして自分たちの将来を考えているのは彼だと感じたのですごい好きなキャラクターでした。