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投機した時間の軌跡

【読書メモ】進化論の最前線

目次

こんな人にオススメ
  • 現在の進化論「ネオダーウィニズム」と知りたい方
  • 進化論だけでは足りなかったものを知りたい方
  • ネオダーウィニズムでも説明の出来ない「生物の進化」を知りたい方
読むと得られること
  • 現在の進化論が取り込んだ理論達
  • それでも説明の出来ないファーブルの観察による生物の不思議
  • 進化論の基礎 
読もうと思った理由・期待したこと

これを読もうと思ったのは、今度まとめますが「読まなくてもいい本の読書案内」という橘玲さんの本で現代の知の大きなパラダイムを見せ付けられて、まだ読んだことのなかった現代の進化論とフラクタルについて知りたいと思ったからでした。

作品詳細

作品名:進化論の最前線
作者:池田清彦
出版社:集英社
発売日:2017年1月7日

要約

進化は種の中での進化の「小進化」と種を超える進化の「大進化」に分けられるが、 現代の進化論をもってしても「小進化」の一部の説明しか出来ず、「大進化」については未だに分かっていないと言える。

ネオダーウィニズム

ダーウィン種の起源では「自然選択」という有利な形質を持った個体が生き残りやすくなることでその形質を獲得した個体の特性が残っていくことで現在の生物の多様性を説明した。

メンデルの「遺伝」は、後世で実験のバラつきのなさから批判もあるが遺伝学と言う分野を作り、その後に突然変異が発見され正しいものとなり、ダーウィンの連続的に徐々に進化していくと言う説を凋落させた。

しかし1930~40年代になると遺伝による変異はとても小さなことが判明し、ダーウィンの「自然選択」とメンデルの「遺伝」は対立するものではなく、統合できるものとなった。

さらに、日本人の木村資成により「分子進化の中立説」という生物の変化は環境に適応するのではなくランダムに変化してそれも保存されてしまうという説が正しいものと証明された。

これにより、「自然選択」「突然変異」「遺伝的浮動」「獲得形質の遺伝の否定」を統合した「ネオダーウィニズム」が完成し、現在の主流となっている。

ips細胞・stap細胞

ips細胞は、分化しきった細胞に特定の遺伝子を入れることで何にでもなれる幹細胞へリプロミング出来ることが画期的。

es細胞は、ヒトになるための胚盤胞を使うため倫理的にも使い辛かった。

stap細胞は、存在しないものであったが、コンセプト自体は荒唐無稽なものでなく、免疫細胞に酸でストレスを与えることでリプログラミングされると言うものである。

別の実験で、キイロショウジョウバエの胚をエーテルで処理すると羽が4枚のハエが生まれその子にも同じ処理をし続けると世代を経るごとにエーテルで処理をしなくても4枚の羽のハエになる確率が上がり続けると言う実験があり、外的なストレスは胚に影響を与えることは荒唐無稽なことともいえない。

ゲノム編集

一昔前は、ウイルスを使って遺伝子を書き換えさせていたため特定の遺伝子情報を正確に狙い撃ちすることは難しかった。

現在は、CRISPR/Cas9と言うシステムを使っている。CRISPR/Casシステムは真性細菌や古細菌の免疫システムで、狙いたいDNAの配列情報を持ったガイドRNAに沿ってそれと同じ情報を持つDNAを切断すると言う性質。

これによって、ゲノム編集で遺伝病やHIVなどの治療が期待できるが、別のDNA情報とかぶっていないかなどの問題があり、生物の基本的な知識の不足が大きな障害となっている。

ヒトの脳の大きさの秘密

ヒトの脳の大きさは、他の生物と比べても体重比でトップクラスを誇っていてヒトが地球を支配している要因としても捕らえられている。

しかし、この脳の大きさはチンパンジーから何らかの遺伝子を獲得して大きくなったのではないことが最近の研究で分かってきている。

その研究によると、チンパンジーにあってヒトにない遺伝子510個を調べていくと、成長を抑制する遺伝子があることが有力視され、遺伝子を獲得したのではなく、何らかの原因で遺伝子が消失したためにヒトになったのが有力であると結論付けている。

さらに、遺伝子を調べていくと私達が思っているのとまったく違う部位が共通の遺伝子によって作られていることがある。
たとえば、黒く太い髪の毛とシャベル状の歯は同じ遺伝子から発現しているなど

ここから、ヒトの脳が大きくなったことと哺乳類にしては体毛も脂肪もないまったく効率的でないわけの分からないヒトの性質が説明できるかもしれない。

感想

まず種の起源の進化論が自然淘汰だけの考えだと、この本で初めて知りました。
さらに、当たり前だと思っていた遺伝などの知識を改めて確認でき、知らなかった遺伝的浮動などの考えを統合した理論としてのネオダーウィニズムを勉強できて、現代の生物学の基礎を学べてよかったです。

本には、このほかにもダーウィンとファーブルの議論や面白い生物に対する基礎的な知識が多く詰まっているので、是非手にとって読んでほしいです。

新書なのでさっと読めますし、難しい言葉や思考なども必要ないように感じたので誰でも読めると思います。

本でも触れていますが、AIやニューロコンピュータのようなものが出てくるような現代から近未来で、生物・人間とはなんなのかと言う問いはとてもこれから重要になってくると思いますし、その基礎として生物・人間って言うのはこんな感じで進化してきて、現代では拙いけどこんな理論もあるんだなと言うのを知ることはとても思考の補助にいいと思うので、この本はとてもおすすめです。