【読書メモ】ナイフ
今日は、重松清さんの「ナイフ」を読みました。
重松さんの作品は、これまでは友達が面白いからと貸してきた「流星ワゴン」以来です。
その後、ちょっとしてからテレビで2時間ドラマ化されていて、周囲と話題が合わせられてよかったなーと思った記憶があります。
目次
作品詳細
作品名:ナイフ
作者:重松清
出版社:新潮文庫
発売日:2000年7月1日
あらすじ
60〜100ページの短編が5つ載っている作品です。
全ての作品が、いじめを題材としたものです。いじめの焦点の当て方が5つとも違ってなんだかすごいなぁと感心させられます。
ワニとハブとひょうたん池で
女子校に通う主人公が、突然、暇だからとハブの対象となる。主人公の周りを見下す描写といじめが移る瞬間が、そうだよぁと思わせてくれます。
ナイフ
主人公は一家の父で、子供がいじめられていることを知りつつも、自分もいじめられた経験から、何かすることがよくないということが分かり抜けられない負の連鎖に。物語中でナイフという凶器を手に入れ父は、拠り所とするが、それでも勇気が出せず子を救うことはできない。似た者親子な作品。
キャッチボール日和
甲子園に出場した三遊間の二人が所帯を持ち、隣同士に住むという偶然から、家族ぐるみの付き合いに。片方は突然死んでしまい、両家の父がわりとして振る舞う主人公。自分の息子がいじめられていることを、認められず、根性など精神的な押し付けをしてしまう。息子の幼馴染もいじめをどうすることもできずにただ見ているだけ。現実をよく表しているようで胸が痛い作品。
エビスくん
東京から大阪へ引っ越してきた巨漢のエビスくん。それに目をつけられ、いじめられる主人公。なんやかんやありつつ、エビスくんを嫌いになれず、エビスくんはすぐにまた転校してしまう。同窓会では、それらを楽しむ描写が。エビスくんの心情もここで判明する。時が経てば全部笑い事になってしまうという、ありがちなエピソードと、いじめる側の寂しさを描いた作品。
ビタースィート・ホーム
最後は、これまでの惨たらしい描写はないが、教師と親の対立を書いた作品。主人公は仕事ばかりで家庭をあまり見なくなった父。妻は、元教師で現在は専業主婦。娘の担任が熱血教師で型にはめようとするような教師で、妻はそれに反発するも、主人公は心の中で「君もそうだったのでは?」と懐疑的。そこから生まれる、親と担任・学校の対立で子供をめぐる社会の難しさが書かれた作品。
感想
短いものが多く、とても読みやすい一冊でした。
僕としてはビタースィート・ホームが一番、心にきました。元教師で同じようなことをしていたのに、娘の教師には同じことをしてしまう。人間のおかしさと集団で一人に向かっていくという怖さ。子育てだからと全て正当化していてとても怖いなと思うと同時に、教師側も子供達のことを全て管理しようとしていて、大人たちの被害を全て受ける子供達が真の被害者なんだろうなと確認させられました。
大人がこんなんじゃ、前の4つの作品みたいに子供のいじめなんて当たり前だよね、という説得力が出てとても感心しました。
いじめられていた人には辛い作品かもしれませんが、とてもいい本だと思うので、興味があったら是非。