トラッキィギャンビィ

投機した時間の軌跡

【読書メモ】変身・断食芸人

目次

作品詳細

作品名:変身・断食芸人
作者:フランツ・カフカ
訳者:山下萬里
出版社:岩波書店
発売日:1958年1月7日
原作発表年:1912年、1921-1922年

変身・断食芸人 (岩波文庫)

変身・断食芸人 (岩波文庫)

 

あらすじ

変身

グレゴール・ザムザがある朝、なにやら胸騒ぐ夢がつづいて目覚めると、ベッドの中の自分が一匹のばかでかい毒虫に変わっていることに気がついた。

こんな冒頭から始まる。

親の借金のせいで、債権者の会社で5年間も営業マンをしている主人公が、急に虫になってしまうことから物語が始まる。

出社時刻に顔を出していないことから部長が家まで訪ねてくるが、虫になっているため起き上がることもできなければ、人間の言葉を話すこともできない。なんとか部屋から出て弁明するも、その場にいた母も父も部長もグレゴールの姿を恐れてしまい、父にステッキで殴られ怪我を負いながら自室へ退散する。

それからというもの部屋に籠るようになり、妹が食事を差し入れてくれるようになる。暇を持て余したグレゴールは天井を這い回る遊びをするようになり、妹は邪魔にならないようにと母と一緒に家具を動かすことにする。しかしグレゴールは人間だった頃の痕跡を消されるのを嫌がり抵抗を試みると、グレゴールの姿を見た母が気絶してしまい、襲ったと勘違いした父にリンゴを投げつけられ背中に重傷を負う。

グレゴールが苦しんでいる1ヶ月の間に、妹は仕事を見つけ、空いていた部屋を貸し出して生活費を工面していた。その結果、グレゴールへの世話はおざなりになっていく。ある日、妹がヴァイオリンを間借り人や家族の前で弾いていると、グレゴールが音につられて出てきてしまう。間借り人たちは、こんな生物がいるなんて聞いていないと、部屋代を払わないどころか慰謝料を請求すると言い出す。それによって家族から絶縁を決心され、部屋に戻るグレゴール。グレゴールもまた家族に迷惑をかけるわけにはいかないと思っていると、体から力が抜け絶命してしまう。そして翌日には家政婦に片付けられてしまう。

憂いがなくなった家族は、久しぶりの休みを取って郊外へと出かける。生き生きしている娘を見て両親は結婚相手を探す頃合いかもしれないと考え始める。

断食芸人

檻の中で断食をすることで名声を得た断食芸人。しかし、彼は断食の監視人が気を使って目を離すことや観衆の関心的に40日しか断食をさせてもらえないことに不満を持つ。時が流れるとともに、断食という芸自体に観衆が飽きてしまう。

その名声を武器にサーカスに身を置くことになり、そこでまた断食芸をすることになる。そこでは、全く客から目を向けられず、断食期間のポップも管理者がめんどくさがり変えずにいたことから今までを越える長期間の断食を行えた。

最後は、サーカスの責任者が檻が足らなくなり断食芸人の檻を動物に使おうとし、中にいた断食芸人は長期間の断食で弱りきり餓死してしまう。

断食せずにはいられなかった、自分に合う食べ物さえ見つけていたのなら、他の人々と同じようにたらふく食べていただろう

最後にこんな言葉を残して餓死し、空いた檻には豹が入り、豹は強靭な肉体で好きなだけものを食べ観衆からの人気も絶大であった。

感想

僕には、レベルが高すぎて世間ほどの「変身」に対して感動というか内面から出てくる感情というか、そういうものがありませんでした。

大学時代のオタクっぽいサークルの友達とかも「虫になる話だよね」とか楽しそうに話していましたが、本当に読んだのかな?って感じです。普通の話しにしか見えなさすぎてやばかったです。

「断食芸人」も豹と断食芸人の比較なんかは不条理も甚だしいと思いましたが、しゃべくり007の島田紳助さん登場回の一発芸人分析で触れられることと同じようなことで、マーケティングの大事さを再考させられました。断食芸人は一発芸人で時代とぶつかったから跳ねてただけで、時代に乗れなかったから落ちぶれたんだろうなと。

ただ断食芸人は、現代のバライティ芸人と違って芸を極めることや観衆の関心を諦めることで承認欲求から自己実現欲求へと昇華させるところが違うんだろうなと思いました。

カフカって世間的には何が評価されているんですかね。変身は読み取れる幅の大きさから、評価が高いんですかね。僕は物語のよさの基準なんて研究者でもないので主観でしか判断してなくて、のめり込めるかどうかくらいでしか判断していません。それでいうと「変身」「断食芸人」は短かったから読めただけのような気がして、面白さとは別のものだったのかと思っています。

けど、こういうことって多くて、時間を開ければまた自分の読書経験とか人生経験とかで面白く読めたりするのが文学なんですよね。今の僕にはまだまだ理解できなくて、世間の人たちは理解できてるってなんだか悔しいですね。けど、今すぐに経験なんて増えるわけでもないので、時間を置いてからまた読みたいと思います。20世紀の文学界に大きな影響を与えて、今でも訳本が出ているわけですから、面白く読めないのは僕の責任ですね。

同世代がどう思うかってのが知りたくなった作品でした。