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【読書メモ】暗黒物質とは何か

目次

作品詳細

作品名:暗黒物質とは何か
作者:鈴木洋一郎
出版社:幻冬社
発売日:2013年9月30日

暗黒物質とは何か 宇宙創成の謎に挑む (幻冬舎新書)

暗黒物質とは何か 宇宙創成の謎に挑む (幻冬舎新書)

 
こんな人にオススメ
  • 中二感溢れる名前のきちんとした理論を知りたい方
  • 文系だから数学的な知識がなくてもこういたことが知りたい方
読むと得られること
読もうと思った理由・期待したこと

同じ出版社から出ている「重力とは何か」「弱い力と強い力」を読んでいたので、同じ作者ではないですが同じシリーズとして読みたいと思いました。

こういう理系の話は割と好きで、基礎的な話を数字を使わないで説明してくれる本を読んで、いつか数学的な話もわかるようにしたいです。

要約

暗黒物質とは

宇宙に満ちている見えない何かの名前で、現在わかっている比率は物質4.9%・暗黒物質26.8%・暗黒エネルギー68.3%となっている。暗黒の2つは光で捉えられない。

見えない何かがある証拠として、以下のことが挙げられる。

  • 銀河の質量を測って見ると「光」で捉えられる質量計算では軽すぎること
  • 銀河の内側と外側の回転速度が等しいこと
  • 重力レンズの存在で、見えない何かが光を曲げていることが観測できること
  • 宇宙の晴れ上がりを観測した時の光の揺らぎだけでは、均質すぎて現在の宇宙の星々が形成できないこと
暗黒物質候補
  • MACHO…質量の小さな目に見えない天体、あったが少なすぎる
  • ニュートリノ暗黒物質の似た性質だが質量が小さすぎて速すぎる
  • WISP…最も有力で、相互作用を起こさずニュートリノと違い遅いもの
物理学の求める大統一理論

物理学では、自然界に存在する4つの力を一つの理論で説明を試みている。

現在、強い力について統一的に説明可能にする「大統一理論」を構想中で、それには超対称性粒子の存在が必要不可欠で、現在判明している素粒子の全てに超対称性パートナーが存在することになる。

その存在は「ヒッグス粒子」と同じく宇宙が高温だった頃にしか存在できないためLHCの中でしか作れず、ニュートリノのように補足が難しく、確認すら困難を極める。

超対称性粒子の中で、自然界でも発見が期待されているものがあり、その粒子は相互作用を起こさず遅い・冷たい粒子という暗黒物質候補と言える性質を持っている。

暗黒物質はどれくらい身の回りにあるか

宇宙には平均して1㎥あたり陽子5.9個分の質量があり、物質は陽子0.29個・暗黒物質は陽子1.58個で暗黒物質は100~1000倍の質量と見積もられているため、見つけ辛い。

しかし暗黒物質には分布の濃淡があるたり、私たちの銀河の周りには20万倍ある。つまり1㎥あたり3000個の暗黒物質がある計算になり、太陽系の回転速度(230㎞/s)によって暗黒物質は1㎤あたり10万個/sも通り抜けていることになる。また地球の公転速度(30㎞/s)により季節によって向かう方向が変わり速度が変わるため季節変動もある。

暗黒物質を捉える

質量は陽子と比べ大きいが速度が230㎞/sと遅く、運動エネルギーはニュートリノの1000分の1にしかならない暗黒物質は補足するのがより難しいと言える。

現在日本では神岡鉱山にXMASSという観測機を作っている。
その目的は「太陽ニュートリノ問題」を解決するためのものだったが別の形でほぼ解決し、使用予定だったキセノン136で検出できる「二重ベータ崩壊」はキセノンの量が大量に必要になることが判明し、現実的な量で観測できる暗黒物質の検出を目指すことになった経緯がある。

物理学の発見は99.99%を超える精度でなければ暗黒物質の発見とはいえない。
そのため実験のノイズとなるものを排除しなければならない。キセノンを空気中から作り出す際に入ってしまうラドンやクリプトンなどの放射性物質、人間に含まれる炭素14などの放射性物質などでも実験のノイズになってしまう。

これら全てを排除して暗黒物質検出の可能性を高めている。

感想

こういう分野の本好きなんですよね。
上でも書きましたが、幻冬社新書の大栗さんが書いている本やパイ中間子の本など結構読んできました。

読めば読むほど、わかってきてなんだか面白いですね。ヒッグス粒子に関する本はまだ読んでないので、次はヒッグス粒子に関する本を読みたいですね。

暗黒物質はまだ検出のニュースはありませんが、あること自体はだいぶ核心に近づいていて、この本で初めて目にした「超対称性粒子」というのは、わかりやすくて良かったです。

これまでも、対になるクォークが見つかることで世代があることがわかってきましたし、標準理論で説明される素粒子全部に対となる粒子があってそれが強い力との統一された理論になるというとなんだか整合性があって気持ちいいなと思いました。

いろんな対称性を科学者は頭の中で考えて、それが実際正解だったと思いますが、僕は未だに学校で習った対称性以上の対称性のイメージがついてません。勉強不足ってことなんですかね。

この本は、文系出身の僕でも読めるくらい優しく書いてあるので、興味がある人の入門として最適な一冊だと思います。