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【読書メモ】色彩がわかれば絵画がわかる

目次

作品詳細

作品名:色彩がわかれば絵画がわかる
作者:布施英利
出版社:光文社
発売日:2013年12月20日

色彩がわかれば絵画がわかる (光文社新書)

色彩がわかれば絵画がわかる (光文社新書)

 

要約

色彩の基本

3色の内の2色を混ぜても、残りの一色にならないことが3原色の条件。

加法混色は、色を混ぜると色がなくなり白になる。
減法混色は、色を混ぜると色がなくなり黒になる。

3原色の2色を混ぜると、混ぜなかった色の補色になる。
補色は反対の色を鮮やかに見せる効果がある。

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色の三属性
  • 色相…色味のこと
  • 明度…ある色をモノクロにした時の明るさ
  • 彩度…鮮やかさのことで、原色に近いほど彩度が高い

これを見る道具として「マンセルの色立体」や「オストワルトの色立体」などがある。

色の現れ方

一般的に見られる3つの色の現れ方

  • 表面色…表面の色
  • 空間色…液体などにつく空間の色、紅茶など
  • 面色…物ではない空間の色、青空など

特殊な3つの色の現れ方

  • 透明面色…透けて見えるものの膜、ガラスなど
  • 透明表面色…透明面色の存在を感じるとき、ガラスに傷があるときなど
  • 鏡面色…鏡に映った光景

白さ、輝きの3種類の色の現れ方

  • 光沢…白以上の明るさになったとき、光の反射で生じる輝き
  • 光輝…光沢より強い、きらきら・つやつやした感じ
  • 灼熱…色が一番輝いている状態、暖炉の薪など
ゲーテの色彩学 

色彩学の巨匠として、ニュートンゲーテがいる。
ニュートンは、物理学の科学的観点から、カメラで捉える世界を説明した。
ゲーテは、心理的な人間的観点から、人間の目で捉える世界の色を説明した。 

  • 順応には、「明暗順応」と「色順応」
    人間が目の成分を調整してしまうために起こる反応
  • 対比には、「色相対比」「明度対比」「彩度対比」
    背景の色・明度・彩度に影響を受けて、背景と反対に片寄って見える反応
  • 残像には、「陽性残像」「陰性残像」
    記憶によって引き起こされる反応で、背景が明るいか長時間対象を見ていると「陰性残像」が起こる

灰色の世界に戻そうとする、調和があると考え、「色相環」を生み出した。

4つの色

赤・黄・緑・青の4つからなる4原色説もある。
赤緑、黄青というセットによって、順応、対比、補色残像現象など様々なことを説明することができる。

3原色4原色どちらが正しいというのはなく、知覚生理学では網膜の錐体細胞は3原色、情報処理の水平細胞は4原色であると言われ、人間の中でも両方が採用されている。

感想

色彩に関することなんて普段は気にもしませんが、こう言ったことも誰かがまとめてくれて、さらに絵画の見方まで一通り教えてくれるなんて、やっぱり本じゃないとなかなか難しいものですね。
ネットなんかだと、自分の興味あるところしか見ませんし、必ずしも体系的に書かれている訳ではなくて、飛び飛びで調べる必要があってめんどくさかったりします。やっぱり本は基本的な知識を得るのにいいフォーマットだと改めて思っています。

ゴッホの「烏のいる麦畑」、ラファエロの「小椅子の聖母」、ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」などを例にとって絵画が色彩的に分析するとどんな技法を使って、どんな効果を狙って描かれていて、作者がどれだけ色彩を熟知していたかなどが解説されていて、絵画を見る幅が確実に広がります。

さらに、僕ら人間がいかに都合のいいようにものを見ているかも把握させられました。目の機能だけでもこんな有様で、都合のいいように記憶をストーリーで仕立て上げたりしてしまう脳の昨日なんかと合わされば、僕たちは世界のことなんて全く見えていないのかもしれませんね。

次は、そう言った脳に関する印象に残ってる本を読み返そうかなーと思いました。昔読んだ本を再読するというのは、昔と今で全く感じかたが違ってなかなか面白いです。