トラッキィギャンビィ

投機した時間の軌跡

【読書メモ】四つの署名

緋色の研究に続く、シャーロックホームズシリーズの長編作第2作目です。

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目次

こんな人にオススメ
  • 「緋色の研究」を読んだ方
  • 推理小説の最低限を知っていたい方
読むと得られること
  • ホームズの苦悩

ホームズは、自分の頭脳の異常さに自分が犯罪者側に回った時のことなどを考え、そのような事のないように勘定の一切を排除しようと決意していることなどから、天才の苦悩が描かれている。

ゲーテの詩を引用し、自分の危うさを表現している。

ああ、なにゆえ自然はおまえから一人の人間しか造りださなかったのか
その素質ならば、偉人にも悪人にも慣れたものを

読もうと思った理由・期待したこと

とりあえず、シャーロックホームズの長編4作は読んでおこうと思っているので2作目の本書を読みました。

4作の長編といえば「星を継ぐもの」に始まるホーガンのSF4作も4作目の「内なる宇宙」の上下巻を買っていないので、買いに行って読みたいなぁと思いました。

なんだか、最後だと思うともったいなくて読みにくいんですよね。
その点、シャーロックホームズは短編集がたくさんあるので、長編だけで終わりではなくて読めそうな気もします。

作品詳細

作品名:四つの署名
作者:アーサー・コナン・ドイル
訳者:駒月雅子
出版社:角川書店
発売日:2013年6月20日
原作発表年:1890年

あらすじ

緋色の研究から時も経ち、ワトスンとホームズは打ち解けた仲になっている。ホームズのような天才が必要な事件が全く起こらないために、ホームズはコカインをして気を紛らわせていた。それを良く思わないワトスンがなんとかホームズの気を紛らわせているところに奇妙な依頼が舞い込む。

依頼人はメアリー・モースタンと言う女で、その父モースタンはインドの囚人警備隊をしていて、10年前の帰国後から失踪していた。モースタンの行方は囚人警備隊の同僚だったショルトーもわからないようであった。

メアリーの元には、6年前から毎年大粒の真珠が正体不明の人物から送られて来ており、今回は面会を求める手紙が届いたという。それについて護衛と事件の解明を頼むためにメアリーはやってきた。

面会に向かう馬車の中で、モースタンの遺品を再度確認したところ、建物内部の図面と「四つの署名ージョナサン・スモール、マホメット・シン、アブズラ・カーン、ドスト・アクバル」という書類があった。

面会に出てきたのはショルトー双子の息子の弟であるサディアスで、モースタンを含む事件のの真相を話してくれる事になる。

ショルトーとメアリーの父は、囚人警備隊時代に見つけた財宝を持ち帰った。途中で意見が食い違って口論になり、メアリーの父は頭に血が上り持病が悪化しその場で死んでしまった。しかし状況証拠が揃いすぎていたためにショルトーはメアリーの父を埋めて隠してしまった。そのことをショルトーは病で死ぬ直前に息子達の前で告白し、アグラの財宝のありかを伝えようとした。その時、窓から見えた白い人影にひどく驚いてそのまま死んでしまったという。

その後、財宝のありかを突き止めた兄弟は正当な所有権がメアリーにもあるとして真珠を毎年送っていた。しかし、兄は父と同じように財宝を独り占めしようとしたため、弟はメアリーとともに説得したく呼びつけたというわけだった。

兄の屋敷に向かって見ると兄は密室で毒の矢で殺され、財宝も奪われてしまっていた。

ホームズは現場を検証した結果、ジョナサン・スモールという片足が木の義足の男と小人の二人が犯人であると推測する。片方の男が強い匂いの薬品を踏んで言ったため犬を使って追うも、河川で匂いが途切れてしまっているため、船で逃げたと分かり追跡は一旦やめて、近くの船宿で聞き込みをして、主人が木の義足の男に頼まれてオーロラ号という船を出したまま帰ってきていないという有力な情報を得る。

追跡の最中、「ショルトーは囚人警備隊の将校で、一人で財宝を持って帰国。白人の木の義足の男を人違いで撃ったエピソード。四つの署名の紙切れのうち白人の名前はジョナサン・スモール。自分で財宝を持って帰らなかったことから囚人。脱走してショルトー少佐に手紙を出し、復讐を図ったが、警備が厳重で果たせず今回の件にいたった」という推測をホームズはワトスンに伝える。

緋色の研究にも出てきた、浮浪少年たちからなる不正規隊に河岸を捜索させるが成果なかった。船を必要なときにすぐ使えて、隠せる場所は船の修理工場だと考え、ホームズは老船員に変装して自ら捜索し発見する。

ジョーンズ刑事に協力の元、高速船を出して彼らが逃亡するのを待ち構える。高速船同士の追走劇の末、共犯者の小男は毒矢を吹きかけたところを銃殺、木の義足男ジョナサン・スモールは逮捕。

ワトスンは財宝をモースタン嬢に届けるが、中は空っぽ。スモールがテムズ河に捨ててしまっていた。財宝なくなった事で、これまでためらっていたワトスンはモースタン嬢に結婚を申し込み承諾される。

ジョナサン・スモールの不思議な物語

インドで兵隊をしていたスモールだが調子に乗ってガンジス川でワニに足を食われてしまう。その後植民地経営の畑で監督の仕事をしていた。

インドでセポイの乱が起こりスモールらのイギリス側は城塞に集まり身を守っていた。そこで門番をしていたとき、四つの署名の残りの三人から、王族の召使アクメットが反乱から守るため城塞に財宝を隠しに来るところを始末して財宝を奪おう、頷かなければ殺すと脅され、それを受け入れる。アクメットは財宝を隠すための道案内として、アクバルに事情をうちあけていた。計画通りアクメットは殺されて財宝は隠された。安全になってから掘り返し四人で分配することを示した「四つの署名」が作成された。

その後、アクメットの殺害が明らかとなり四人は囚人となるが、財宝については知らなかったようで追求されずに囚人となった。

囚人将校だったショルトーはギャンブルで借金がたまっていた。自由が欲しいスモールは三人と相談して、財宝の一部をショルトーらにも分配することと引き換えに、脱走の手助けをするという条件で財宝のありかを教える。

しかしショルトーは裏切り一人で財宝を持ち帰ってしまう。スモールは復讐を決意し、現地人のトンガを仲間にして脱走する。双子の息子の兄バーソロミューを殺したのは本意ではなく、共犯者の暴走だったことを伝える。

スモールが明らかにしなかった内部の共犯者は執事のラル・ラオであったとホームズは推測して物語は終わる。

感想

ホームズが思ったよりまともじゃない人間で驚かされたというのが、本作の1番の感想でした。

冒頭から、退屈すぎてコカインを注射していたり、注射の痕がたくさん見えるほど常習していることなどから、やべえ奴だと思ってしまいました。

当時のイギリスではコカインとかドラッグというのは合法だったんですかね、日本でも覚醒剤はひろぽんとかいって薬局で売ってたみたいですし、昔はゆるゆるだったんですかね。そういう歴史の本とか面白そうなので借りてみたいと思いました。

並ぶもののいない孤独というか、そういうものが頭はいいけれども凡人の域にいるワトスンとの対比で強烈に描かれていて、ホームズの孤独とワトスンの結婚、理性と感情などが露骨な感じで印象に残りました。

チェスタートンの

狂人とは理性を失った人間のことではない、理性以外のあらゆるものを失った人間のことである。

という名言がこれほど当てはまるキャラクターもいないんじゃないかという印象を受けました。自分の危うさまでも理解したうえで理性で縛り付ける様なんてそのままだなと思いました。