【読書メモ】レア 希少金属の知っておきたい16話
目次
作品詳細
作品名:レア 希少金属の知っておきたい16話
作者:キース・ベロニーズ
訳者:渡辺正
出版社:化学同人
発売日:2016年3月30日
こんな人にオススメ
- レアアースについて知りたい方
- 僕みたいな文系で金属について知っていきたい方
読むと得られること
読もうと思った理由・期待したこと
例のごとく図書館での適当借りの中の一冊です。普段だったら、絶対買わないような本を手に取れるのが図書館の良さですね。
期待したことは、「元素をめぐる美と驚き<上>」で金属の歴史って面白いなと思ったので、より詳しく知るために手に取りました。
要約
レアアース
レアアース・希土類とは、イットリウムとスカンジウムと周期表で連続したランタンからルテチウム15元素を合わせた、17元素のことである。
レアアースと言ってもよく話に出る元素ならありふれた金属と同じくらいの量が地殻に存在する。しかし金や銀と違って純金属の姿であることがなく、単離するためには大金をかけて化学処理する必要がある。
大変な苦労をしてレアアースを生成する理由は、エレクトロニクス製品に欠かせないからである。
レアーアースの主要産出国は米国から中国へと変わっていった。
中国は大量に土地があるため、安値で品質の良いレアアースを売り、自国の発展と政治的影響力を買った。軍備や最新機器には大量のレアアースを使うため、他の国が政治的に国益に干渉してきたとしても優位に立てるし、最新機器の製造までを請け負うことで自国の発展にも繋げた。
もし他の国が代替技術を開発する間も、中国は自前のレアアースで研究の先を走るという素晴らしい戦力である。
原子炉が産む金属
発電用原子炉の中では、ウラン化合物が主体の「燃料棒」も、核反応の勢いを加減する「制御棒」も、中性子を吸収するため元素変換によってレアアースが生成される。
しかし、その再処理にかかるコスト・一箇所に使用済み核燃料を集めるリスクなどを考え、未だに再処理に積極的な国は少ない。
タンタル
タンタルという金属は、スマホなどの機器の小型高速化には欠かせない金属であるが、その主要な産出国であるコンゴは、その資源のために紛争が絶えず、先進国はその上澄みを吸い取るだけである。
こうした中で、先進諸国の企業は倫理の問題に向き合うようになってきた。例えば2010年にappleは素材の調達元を追求された時に真摯に対応し、その後調査し公表にまで乗り出した。
強運の国
中国は、内モンゴル自治区に多くの鉱物資源を持っている。しかし莫大な資源があってもそれを利用できる知恵を持った人物がいなければならない。
それが鄧小平で、その生涯で毛沢東らによって2度も権力の座から追いやられたものの返り咲き、毛沢東では達成できなかった国の工業化や超大国へ上り詰める戦略を作り出した。
悲運の国
アフガニスタンは、代理戦争の地として今でも政情不安の国であるが、地下資源調査によると1~3兆ドル相当が眠っているとされる。
しかし採掘技術の低さや、指導者の力不足、地理的に不安定であることなど、様々な要因で未だに中国のような大国への戦略が打ち立てられていない。
都市鉱山
廃電子機器のアマチュア採鉱者が最近増えている。彼らは「電解法」か「沈殿法」を使い金属を単離するが、多量の廃棄物や環境汚染に繋がっている。
また、途上国への廃棄は、その土地の貧しい人々が日銭を求めて機器を分解するため、鉛などが土壌や空気中に多く拡散し、健康リスクやその土地の生産性の低下に繋がっている。
もし回収・単離をやりたい人がいるなら「refining precious metal wastes」というカーム・ホークという人の本を読むことを推薦している。
未開の鉱脈
南極は、近い将来資源の宝物庫と見られる可能性が高い。南極条約や南極条約議定書などによって2048年までは商用の採掘ができないが、その後はその限りではないためである。
グリーンランドは、2013年に放射性元素採掘禁止の撤廃を議決したため、南極の練習台としての役割が期待できる。
日本は、最高水準の技術力をいかして海底の資源に目を向けている。しかし、海底に資源があるとわかると中国などの隣国との領土問題が発生しうまくいっていない。
最後の手段
資源が枯渇した場合の最後の手段とは、地球外の資源をとることである。
現在でも、月や火星などは所有権を主張したり、不動産として売買されているものもある。近い将来、排他的経済空域などができるかもしれない。
太陽系内の1km以下の小惑星のなかには「ヴィシュヌ4034」「2000BM19」などのような2000兆円の価値を見積もられているものもある。
感想
何よりもレアアースって別にレアじゃないんだってことに一番驚きました。
中国の長期的で強かな戦略があって今のレアアース市場の独占があるっていうのが、中国の強さを垣間見たようでやっぱりあの国はいつでも超大国なんだなーと思いました。独占するのは、独占している側からすれば理想の状況ですしね。独占の利点を生かして世界の製造まで牛耳り開発力まで手に入れて、どう転んでも中国が得をするように、目先の利益はいくらでも差し出すなんてなかなかできそうになくて、見習う点が多くありました。
これだけ発展したように見えて、まだまだ採掘というのに素材の供給はかかっていて、その供給場所もまだまだ深海・宇宙・南極・グリーンランドなど多くの場所が残っているなんて世界は広いんだなと思わされます。
金属にまつわる、経済・殺し・原子炉・途上国と先進国の関係の闇・未来への展望など様々なことが広く浅く書かれていて初心者にも楽しめる一冊でした。
原子炉の中でレアアースができるなんて初耳でした。今後そういう動きが出てもおかしくないというのも結構驚きです。